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株式会社永井工業所

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永井賢一さん
第4回 

注文を必ず形にするプラスチック成形加工。
「できるまで諦めない」ものづくりの熱意



株式会社永井工業所
永井賢一代表取締役

小布施町出身。プラスチック用金型メーカー勤務を経て、1975年に永井工業所入社。1997年に代表就任。「木を育てる前に先ず土壌を培う」という農業の言葉を会社経営に役立てている。

「工場らしくない空間」で生まれる緻密なものづくり

「工場らしくない空間」で生まれる緻密なものづくり

敷地の約半分を雑木林が占める永井工業所。社屋建設時に植えた木々が10年ほどかけて林に成長し、季節の色を届けてくれる

「工場らしくない空間」で生まれる緻密なものづくり

ノートパソコンに搭載するファンのモーターに使うインシュレータ(絶縁体)。直径2cm?にプラスチック成形加工の技術が凝縮されている

小布施町の山すそに位置する永井工業所。その敷地の約半分を占めるのが、建設時に植えた豊かな雑木林です。春は桜に新緑、秋は紅葉にどんぐり。オフィスの窓の外には、季節ごとに装いを変える贅沢な風景が広がっています。
「せっかく小布施という緑豊かな環境にあるのだから、工場らしくない空間を作ろうと考えたんです」
 そう話してくれたのは、代表取締役の永井賢一さん。2005年に現在の場所に拡大移転したのを機に、会社の環境を見直したと話します。10年ほどかけて育てた雑木林のみならず、内装にもひと工夫。工場やオフィスの壁は温かみのあるグリーン、柱は鮮やかなイエローにして気持ちよく働ける環境にしています。工場内は冬に雪が積もっても光が入りやすいよう、そして夏は熱が逃げやすいように、天井にトップライトを設計しました。
 そんな永井工業所が手がけているのは、どんな製品なのでしょう。永井さんが手のひらに乗せて見せてくれたのは、直径3cmにも満たない円形のパーツです。
「これはインシュレータという部品で、ノートパソコンの熱を逃すファンに使われます。絶縁体の役目を果たすもので、特殊プラスチックで製造しています。ここにコイルを巻いてモーターに組み込むと、ファンが動く仕組みですね」
 機械製品や自動車などの部品メーカーから依頼を受け、成型加工技術を生かして各種部品を製造する永井工業所。主力製品のインシュレータは、近年はコイルをより多く巻けるよう薄く仕上げることが求められることから「スーパーエンジニアリングプラスチック」と呼ばれる特殊素材を導入するなど、絶えず進化を続けています。
「クライアントの図面に沿って、指定の材料とサイズでできるだけコストを抑えて丁寧に作る。それが私たちの基本です。メーカーさんも競争ですから、他ではできないものを求めてきます。それに応えるために、こちらから形状の提案などをすることもありますね」

苦難を乗り越え行き着いた「断らない」姿勢

苦難を乗り越え行き着いた「断らない」姿勢

ディーゼルエンジンに搭載するヒーターを出荷前にチェック。これまで通算60万台を出荷し、海外にも輸出されている

苦難を乗り越え行き着いた「断らない」姿勢

特徴的な形の屋根は中央部分にトップライトを設け、工場内に光を取り込む。夏場の熱の逃げ道も兼ねる

会社の代表になって23年。永井さんが心に決めている思いがあります。それは「来た仕事は断らない」ということ。シンプルですが、とても難しいことです。
「私たちは、いわゆる下請けという立場です。お客様に選ばれ続けるためには、他社ができないことをやっていかなければいけません。だからこそ、いただいた仕事はたとえ難しくても必ず応えると決めています」
 例えば、クライアントからこんな相談を受けたことがありました。
「モーターの特性や安定性を保つために、コイル部品の封止成形ができないか?」
 そこで永井工業所は、薄さが特徴の「スーパーエンジニアリングプラスチック」で包む技術に挑戦。試作を重ね、実現します。この技術によってモーターの耐久性は大幅に向上。車などの重要なパーツに有効な、新しい技術の誕生でした。
 永井さんがこうして一つひとつの仕事にいっそう真摯に取り組むようになったのは、ある時期を経験したからでした。2011年、2012年に業績が大きく落ち込み、「この会社はもう終わりだ」とさえ感じる時期があったのです。大規模な設備投資に生産体制が追いつかなかったこと、海外に仕事が流れてしまったなど、さまざまな事情が重なったのが理由でした。
「信用金庫経由で来ていただいた中小企業診断士の先生からは、『正直、御社は生き残れるかどうか分からない』と言われました。けれどそこで相談したことを機に、『私は何も代表らしいことをしていなかった』と気づくことができたんです。それからは会社の存続を第一に考え、採算の取れない部門を廃止し、断腸の思いで人員整理も行いました」

独自のオーラを放つ製品を目指して

独自のオーラを放つ製品を目指して

粒状の樹脂を成形機に送り、シリンダー内で液体状に溶かしたのち金型に入れて成形。「鯛焼きの工程に似ていますね」と永井さん

独自のオーラを放つ製品を目指して

自身の農業経験から「まずは土を育てること」と人材育成に力を入れ、社員間で技術を受け継ぐ環境を大切にしている

そして見事、復活を果たした永井工業所。無理な設備投資の反省を生かし、永井さんは「仕事の規模=売上高よりも、内容=利益を重視していこう」と思いを新たにします。それが「来た仕事は断らない」という姿勢につながっていきました。
「私たちは特殊な技術を持っているわけではありません。金型とプラスチックがあれば誰でもできると言われれば、それまでです。自分ができることだけやっていたら負けてしまう。難しいことも諦めず、できるまでやり続ける。それだけなんです」
 できるまでやる。だからできる。そのために永井さんや技術者の中にある知識と経験、勘を総動員して、不可能も可能にしていくのです。
「時にはハッタリで『できます』と仕事を受けてしまうこともありますよ(笑)。でも姿勢は伝わると思いますし、もちろん、引き受けたからには形にします」
 2017年には信用保証協会の経営支援サービスの一環で、中小企業診断士2名が派遣されました。客観的に業務へのアドバイスを受けたことで「社長としてやらなくてはいけないこととやってはいけないことを再確認できました」と永井さんは話します。
 従来はパーツ製造がメインでしたが、2011年頃からは組み立て分野にも業務を拡大。クライアントのコストダウンにつながり、好評を得ています。柱になっているのはディーゼルエンジンに搭載するヒーターで、海外にも多数輸出されています。さらに美容室のシャワーヘッドやペットボトルに取り付ける浄水パーツなど、エンドユーザー向け製品への挑戦も進んでいます。
「安く大量生産するのがプラスチック製品の宿命ですが、これからは少量でもニッチな分野を目指していきたいと思っています。私たちの技術でお客様が求める以上のものを提供していけたら。箱を開けた時に『この製品は何かが違う』というオーラのようなものを感じる、そんなものづくりを目指したいですね」

自然豊かな小布施の山すそに位置する本社兼工場。おおらかな平屋建てで、豊かな雑木林に囲まれている

会社データ 株式会社永井工業所
創業 昭和35年
事業内容 プラスチック成形加工
住所 〒381-0296 長野県上高井郡小布施町大字雁田438
TEL 026-247-2521
HP http://www.nagai-ind.co.jp
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