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株式会社キューズ

宮下 寛樹代表取締役

精密な金属切削加工を手掛ける株式会社キューズは、主にアルミニウムを素材とした光学機器部品のメーカーです。顕微鏡、分析器、測定器、テレビカメラなどに使われるレンズを保持する金属枠(鏡筒)や土台部品を、多品種少量生産で供給しています。わずか8ミクロン(0.008mm)単位の精度が求められる世界で、薄く・軽く・高精度という難しい要求に応え続ける宮下社長に、ものづくりと経営への想い、そしてこれからの夢を伺いました。

光学機器を支える“薄く・軽く・高精度”の部品づくり

光学機器を支える“薄く・軽く・高精度”の部品づくり
光学機器を支える“薄く・軽く・高精度”の部品づくり

当社がつくっているのは、アルミニウムを主とした非鉄金属や樹脂を使用した光学機器・医療機器部品です。例えば顕微鏡やカメラのレンズを支える金属部品などです。レンズがどんなに良くても、それを押さえている金属枠の精度が出ていなければ意味がない。高いものだと8ミクロン(0.008mm)、という精度を求められることもあって、レンズ側で出てしまうズレを金属側で吸収してあげる、そんな役割も担っています。 光学機器は研究室や医療現場など、基本的に室内で使われますから、自動車部品みたいな強度よりも「扱いやすさ」が大事になります。レンズをちゃんと保持できる最低限の強度を維持しながら、あとはとにかく薄く、軽く、しかも高精度に、という世界ですね。この薄く・軽くと高精度を両立させるところが、ほかの分野とはちょっと違う難しさで、当社の強みだと思っています。 生産のほうは、徹底して多品種少量です。大学の先生から「左利きだから操作を全部反対にしてほしい」なんて要望をいただいて、1台だけ、5台だけといったカスタマイズ品をつくることも珍しくありません。スマホや防犯カメラみたいな大量生産の小型カメラではなく、台数の限られたテレビカメラなど特殊な用途が中心で、細かいニーズに応えられる体制を長年かけてつくってきました。

品質は「できて当たり前」、信頼は納期と技術力から

品質は「できて当たり前」、信頼は納期と技術力から
品質は「できて当たり前」、信頼は納期と技術力から

金属の切削加工の工程は、完成品から見れば本当に“初期の初期”の工程になります。ここで遅れたら、そのまま最終製品の納期がずれてしまいます。今の時代、精度よくつくれるのはもう「できて当たり前」。その上で、どれだけ早く、言われた納期にきっちり間に合わせるか、ここが一番の勝負どころであり、信頼をいただくポイントだと感じています。 その短納期と高品質を両立するために、工場のあちこちに独自の工夫を散りばめてきました。機械メーカーさんが見て「こんな使い方するんですか」と驚くような使い方をしていたり、薄いものを加工するための自社製コレット(治具)を自分たちでつくって改良してきたり。多品種少量にこだわってきた歴史の中で、少しずつ積み上げてきたノウハウと技術力が、うちの武器になっています。

会社は従業員のもの」――健康経営と人材育成

会社は従業員のもの」――健康経営と人材育成
会社は従業員のもの」――健康経営と人材育成

私が38歳で社長を引き継いだとき、最初は「自分の色を出して改革しよう」と思っていたんですが、いざその立場になったら考えが変わりました。今いてくれる従業員は、私ではなく先代社長と共に歩んできた人たちですから、急に方針をガラッと変えたら混乱するだろうと。一度は先代のやり方をそのまま受け継いで、話し合いながら必要なところだけ時間をかけて変えていく、というやり方を選びました。 ちょうどその頃、従業員が悪性リンパ腫や脳梗塞で立て続けに倒れる出来事があって、20人規模の会社で1人欠ける重さを身にしみて感じました。「健康を守ることこそ経営の最優先だ」と思うようになって、法定健診だけではなく、全員を人間ドックに切り替え、3年に1回は脳ドックも受けられるようにしました。費用的には正直きついですが、そのおかげで膵臓の異常が早く見つかって、手術して復帰してくれた社員もいます。 人材育成に関しては、近くの南信工科短大さんの短期課程機械科の訓練コース(6か月)を活用しています。旋盤やマシニングセンタ、高性能な測定器を使いながら、先生のもとで半年間基礎をしっかり身につけてもらう。そこから現場に戻ってOJTでうち独自のやり方を教える、という流れです。これなら、教えるのが得意とはいえない熟練職人の負担も抑えつつ、効率よく、質の高い技術を引き継いでいけると感じています。 経営のモットーとしていつも自分に言い聞かせているのは、「会社は社長のものじゃない、従業員のものだ」ということです。会社の進む方向を、上から一方的に決めるのではなく、ここで働く全員で決めていきたい。極端な話、みんなが本気で「農業をやりたい」と言うなら、それもありだと思っているくらい、その気持ちは強いですね。

「大変だったけど楽しかった」と言われる会社、未来に残る技術へ

「大変だったけど楽しかった」と言われる会社、未来に残る技術へ
「大変だったけど楽しかった」と言われる会社、未来に残る技術へ

私の夢は、従業員やお客様に、仕事を振り返ったときに「大変だったけど、面白かったよ、楽しかったよ」と言ってもらえる会社にすることです。ただ黙って仕事をこなして終わり、ではなくて、難しい課題にみんなで挑戦して、その達成感や楽しさを共有できる組織でありたい。その前提として、確かな技術力は絶対に必要だと思っています。 技術者が一番楽しそうなのは、やっぱり難しいものにトライしているときです。「こんなの、できないよね?」と相談しに行くと、「いや、こうやればできるかも」と工夫して形にしてくれる。そういう難題へのチャレンジを積み重ねていくことが、結果として製品の付加価値を上げて、会社の成長につながっていくんだろうと思っています。 今、私たちが使っている道具や加工方法は、ここ数年で急にできたものではなくて、金属加工の世界で何十年、何百年と積み重ねられてきた先人たちの知恵と経験の結晶です。その歴史の一部に自分たちも加わる以上、「この加工方法、一体誰が考えたんだろう」と後世で語られるような技術や製品を、いつか生み出してみたい。終わりのない精度の追求の先に、未来に残る技術を形にしていくこと。それが、キューズとして、そして私自身の夢だと感じています。

店舗情報 株式会社キューズ
現在地 〒396-0041 長野県伊那市西箕輪1582-1
電話番号 0265-72-9999
Webサイト http://www.9-s.co.jp
事業内容 光学機器・医療機器・測定機器等の部品加工
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