岩本 祐毅オーナーパティシエ

当店は、「おうちでケーキ」といって、母親が作ってくれるようなケーキを目標にしています。
母親が子どもに食べさせる、家族に食べさせるように、一つ一つ心をこめて作っていく、それを目標にしてケーキを作っています。家だと素材に正直にやるしかないと思うんですよ。
手作業で、普段から手に入る食材で作っているので。でも、心がこもっている。
心をこめると全然仕上がりが違うんですよね。当店では素材に良いものだけを使うようこだわっていますが、素材に正直に、シンプルな分、心をいっぱいこめて表現していきたいです。

こだわりはスポンジ生地。
私はホテルに入社して長い間焼き場を担当していましたが、湿度や温度で仕上がりが変わってきてしまうので、手で出来上がりを触って感じて出すようにしています。
取り寄せた卵を使い、慎重に焼き上げます。
フワフワすぎない、ある程度食感を残しつつしっかりしたスポンジではあるんですけど、きめが細かく、生クリームとの相性が良い、とろけるようなショートケーキを目指しています。

幼い頃からケーキを作るのが好きで、学校に持っていったりもしていたのですが、ケーキ屋さんになろうと決めたのは高校卒業間近です。
進路を決める際に、小学校の文集を見る機会があったのですが、皆が人生設計を書くページの自分の欄を見た時に、「料理の専門学校に行く→料理の修業をする→食堂を経営する」というのが時系列で書いてあって。
それを見た時に、自分の元々の夢が料理やお菓子など、ものを作り出して皆に喜んでもらいたいということだったのを思い出したんです。
それがなければケーキ屋さんにはなっていなかった、運命ですね。

小学校低学年ぐらいの私の誕生日に、学校から帰ってきたら母親がそわそわしていたんです。いつもと違うな、どうしたのかなとは思っていたのですが、夜になって母親がお皿を持ってきまして、そのお皿に母親の作った飛行機型のケーキが載っていたんですよね。 それを見た瞬間に、こんなのできるんだ、だからそわそわしていたのかと思って。
母親が、子供になるべく悟られないようにする気配りだとか、こういうものができるんだというのを見せてくれて、それに感激したのを今でも覚えています。
その出来事が現在へのスタートの一つになったかもしれないですね。

お客さまの要望で作る、世界にひとつだけのオリジナルケーキもご好評をいただいています。
お客さまの頭の中にあるイメージを形にするというのは本当に大変な作業ですが、お客さまが出来上がったケーキを見て喜んでくれたり、お子さんのバースデーケーキを注文された方が後日お子さんを連れてきて「ありがとう」って言ってくれた時の笑顔だったり、そういうものがあるからやめられない、やめたくないですね。
最近では、共働きの世帯が増えて、忙しくてなかなか家でケーキを作る時間がないご家庭が多いと思うんです。私が幼い頃に家庭でしてもらったことの、代わりはできなくともお手伝いができればという思いが、オリジナルケーキに繋がっていると思います。

店名の“Chou　Chou（シュシュ）”はフランス語で「かわいらしい」「お気に入り」という意味なのですが、お客さまにとってそういう存在でありたいです。
夢は、子どもたちが大きくなった時に、自分が設計したお店で、家族皆で働くことです。今の店舗でもケーキ作りをガラス張りでお客さまに見ていただけるよう工夫していますが、その延長線上でカフェスペースなども隣接させて、お客さまとふれあう時間をより長くしていきたいですね。
お客さまの笑顔が溢れるお店にしたいです。