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株式会社ナフィアス

渡邊 圭代表取締役

信州大学繊維学部内にある株式会社ナフィアスは、ナノファイバーという最先端素材を基盤技術として、マスクをはじめ様々な製品の開発から製造、販売まで手掛けるベンチャー企業です。
代表取締役の渡邊 圭さんにお聞かせいただいた事業への想いや夢をご紹介します。

ナノファイバーという素材に魅力と可能性を感じて起業

ナノファイバーという素材に魅力と可能性を感じて起業
ナノファイバーという素材に魅力と可能性を感じて起業

 社名「ナフィアス NafiaS」は、ナノファイバー(Nanofiber)の「ナフィ(Nafi)」と、アジアの語源と言われている(asu・ia)で日の出を意味する「アス」を組み合わせた造語で、ナノファイバーの日の出という意味です。NとSが大文字ですが、これはNorth to South、北極から南極まで地球全体にナノファイバーを通じて貢献していこうという想いが込められています。
 ナノファイバーとは、簡単に言うと細くて長い繊維を意味します。業界内では、繊維断面の直径が1μ(マイクロ・1μは1mmの1000分の1)以下、アスペクト比(直径対繊維長)が100以上のものと定義しています。当社はナノファイバーの製造技術の研究開発から行い、髪の毛(70~90μ)の400分の1や800分の1の細さのものを使って、製品を開発、製造、販売しています。
 もともと信州大学繊維学部に入学して、大学院でもナノファイバーの研究をしていました。繊維は、細く長くしていくことが研究開発の一つの方向性としてあります。その中でナノファイバーは最先端にあり、研究したもの、開発したものを製品として世の中に出してみたい、新しいものを作りたいと感じていました。どうせやるのであれば、まだ誰もできていない分野でチャレンジしたいという気持ちがあり、会社を立ち上げました。

高性能で、通気性・快適性を追求

高性能で、通気性・快適性を追求
高性能で、通気性・快適性を追求

        一般用マスク AIR M1(エアーエムワン)   N95規格マスク NafiaS-N95
 
  ナノファイバーを使用した代表的な製品は、マスクです。マスクの役割は防護すること、いわゆるプロテクト性が最も重要です。通常はプロテクト性が高いと息がしにくかったり、熱がこもって暑くなってしまったり、むれたりします。特に感染対策や粉塵対策で使われるマスクは、プロテクト性が高い反面、通気性や快適性で不満を持たれていました。しかし、そこの改善に素材からチャレンジしていく企業はあまりありませんでした。そこで当社は、ナノファイバーの素材を活用し、規格値のプロテクト性を満たした上で、快適性を高めるマスクの開発をスタートしました。基礎的な研究も念入りに行い、ナノファイバーの製造方法や素材物性と微小粒子の捕集効率や通気性の関係性に関するデータを蓄積し、高いプロテクト性を保ちながら、通気性を最大限高めた高性能マスクを製品化することができました。この開発成果は、令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰、科学技術賞(開発部門)を頂くことができました。
 感染症に関わる医療従事者の方や粉塵を扱う作業現場の方向けの米国N95規格マスクも2018年に完成し、販売しています。通常の防護マスクはカップ型で生地も厚く重厚なものが多いですが、当社のNafiaS-N95はフィルター性能はもちろん、生地が薄く柔らかいため、フィット性が高く、息のしやすさ、むれにくさ、声の聞こえやすさ等の快適性が高いマスクになっています。
 素材系ベンチャーのビジネスモデルは、通常初期の設備投資が多額になることに加え、収益が出るまで時間を要します。製品が順調に販売につながればよいですが、思うように販売できなかった場合、費用が重くのしかかるリスクがあります。そのため、通常は外部から投資を受けることが一般的だと思います。当社は、外部からの投資を受け入れていなかったため、まず商品化が早いマスク製品からスタートし、その収益を次の製品開発に充てるといった進め方をとりました。大学発ベンチャーとして大学の保有している高性能な評価機器も時間料金のみで使用できる立場にあるため、初期の設備投資を抑えながら研究開発を進めることが出来たということもあります。マスクに着目したのは、他製品に比べ構成部品も少なく、素材から製品までの開発ステップが短いということ、当時国内では花粉症対策等で一定の需要があったこと、さらにPM2.5等の大気汚染や今回のようなパンデミックが起こる可能性が増していたことも理由の一つです。

ナノファイバーを使ったアイディアをすべて形に

ナノファイバーを使ったアイディアをすべて形に
ナノファイバーを使ったアイディアをすべて形に

 将来は、素材開発から、用途に合わせて、ナノファイバーを使った様々な製品を作っていこうと思っています。会社設立の当初から思い描いていたとおり、少数精鋭で新しいものをどんどん世の中に提案していく会社にしたいです。
 今、レインウェア製品の開発も行っています。ナノファイバーのシートは80%以上が空気でできていますので、非常に軽くて通気性も高い、それでいて目が細かく、緻密な膜になっています。防水性を保ちながら、軽くてやわらかく、むれにくい、といったメリットがあります。今後出来上がったものを、自社ブランドとして立ち上げることを目指しています。
 ナノテクノロジーは、最少の資源で、最大の効果を発揮できるので、結果的に省資源化、省エネ化、省スペース化ということに役に立てると思います。
 ナノファイバーの技術を通じて、世界で役に立つ製品を作れる会社として、世の中に貢献していきたいと考えています。

店舗名 株式会社ナフィアス
所在地 〒386-8567 長野県上田市常田3-15-1 信州大学繊維学部内Fii施設4階
HP http://www.nafias.jp
事業内容 ナノファイバー製品の開発、製造、販売
店舗外観 外観写真
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