近藤　サトル代表取締役

30歳の時に当時勤めていた原宿のアパレルブランドメーカーを退職しました。原宿での仕事に手ごたえを感じており、また長男という責任感から地元である南信州に帰郷し、飯田市を拠点として独立しました。独立当初は前職の経験を活かし、自身がプロデュースしたファッション関係の商品を全国の提携先販売店で販売してもらうことを中心に事業展開していました。地元で活動していく中で、徐々に法人や個人からのデザイン関係の依頼が増え始め、ブランドの立ち上げの手伝いなどのプロデュース業も行ってきました。また並行して、焼肉文化が根強い飯田地域での焼肉店経営や古い商家の蔵を活用したカフェ経営など事業の幅を広げていきました。現在は、デザイン事業とカフェ三連蔵や旨肉酒場やきまるの飲食店経営の2本柱で事業展開しています。
英語で笑うという意味の「LAUGH」と粗いという意味の「ROUGH」」を掛け合わせた「LAF」というオリジナルブランドを展開しています。最近は、コードバンを使用したレザーウォレットを中心に商品を手掛けています。革のダイヤモンドと呼ばれるコードバンは馬一頭から極僅かしか取れない希少な部位を使用しており、コードバンを鞣して鞣し革にするタンナーが世界でも数社しかありません。その一つが飯田市にある企業です。せっかく飯田にいるなら地域の地場産業を活かそうという思いもあり、コードバンを自身のブランドに落とし込んで商品にしています。

きっかけは、高校の同級生からの誘いでした。
当時、リニア中央新幹線が2027年に開業されることが決まり、飯田市も長野県駅として停車駅となる計画がリリースされました。リニア中央新幹線が飯田市に発着することで、従前より都会へのアクセスが良くなることに伴い、飯田地域の人口流出が加速してしまうのではないかと懸念がありました。飯田地域に何か魅力がないと、地域が衰退していく一方になると考え、若い層を取り込んだ魅力的な取り組みを行おうと計画する、若手社長達の集まりがありました。そのメンバーの一人が、飯田地域の地域資源である焼肉文化と若者に人気のあるロックフェスを掛け合わせた焼來肉ロックフェスを提案し、計画が始動しました。その集まりのメンバーの一人というのが私の高校の同級生であり、飯田を拠点に活動していた私に声がかかりました。最初に話を聞いた時は、上手くいくはずがない、やめとけと思っていましたが、求められるのであれば頑張ろうという気持ちになり、焼來肉ロックフェスの計画に参加することを決めました。
焼來肉ロックフェスには、プロデューサーという立場で関わっています。アーティストのブッキング、ステージのレイアウト作り、タイムテーブルの計画、ポスターやチラシ、グッズの製作など多岐にわたって活動しています。こういった野外ライブでの醍醐味は、そこでしか味わえない音や匂いだと思っています。音や匂いには、その時の感動や体験を思い出させる効果があると思っています。誰しも、若いころによく聴いていたアーティストの曲を久しぶりに聴くと懐かしく感じた経験があると思います。焼來肉ロックフェスも同じように、その時の感動や体験を思い出すことで懐かしく思えたり、温かみを感じたり、テンションが上がったりする、そんな色々な可能性を秘めているイベントだと思っています。自分がそういったことを手掛けられる立場にいることに対して幸せを感じつつ、自分にしかできないことをやろうという気持ちで取り組んでいます

すずり焼肉は、コロナ禍に始めたソロキャンプがきっかけで誕生しました。キャンプをした際に、せっかくだから肉を焼こうと思い立ち、そんな流れから地域の仲間と肉を焼く鉄板を作ろうと盛り上がりました。地域の仲間の一人に、金属加工を生業とした会社の経営者がいたため、様々な形の鉄板を製作してもらい、試食を繰り返す中で納得のいく鉄板が完成しました。それが硯の形をしたすずり焼肉です。
硯の形状は、肉を焼く部分とタレを入れるくぼみ部分で構成されます。くぼみ部分には松本市の企業と共同開発した醤油ダレを入れ、肉を焼いた際に出る肉汁がくぼみ部分に垂れることで、醤油ダレと合わさり絶妙な味となります。この醤油ダレは、飯田地域で焼肉を食べる際に昔からよく食べられる醤油とにんにくと鷹の爪のみのシンプルなタレをベースに開発しました。自社で経営する旨肉酒場やきまるでもすずり焼肉を食べることができ、独特ながらも好評いただいております。

　人と交わりながら何か面白く楽しいことをやって、笑顔が沢山生まれるようにすることが自分のテーマだと思っています。面白い何かをすることでそこに人が集まり、またそれがきっかけとなり、何かと何かが繋がって新しいモノを生み出す。その結果が、焼來肉ロックフェスであったりすずり焼肉であったりします。そうやってこの飯田地域で自分が手掛けてきた財産が沢山あるので、この財産を活用して引き継いでくれる後輩が今後でき、このサイクルを循環していくことが私の夢です。